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広陵高校野球部の不祥事と『忘却バッテリー』が描く部活動の歪さ

miteirubouzu114

この夏、強豪・広陵高校が大会の途中で甲子園出場辞退という“前代未聞”の出来事が発生しました。
辞退した理由は野球部内で起きた暴力事件、そしてそれがSNSで拡散し社会問題に発展したことです。

暴力を受けた当時1年生の生徒は野球部を退部し、転校を余儀なくされました。
これは特定の部員間のみの問題ではなく、部活動に根付いた上下関係のシステムがもたらす構造的問題の一例です。

一方、漫画忘却バッテリーにも、この現実を彷彿とさせる描写があります。
そこには才能があっても厳しい上下関係に順応できない者は活躍の場を失い、やがて埋もれてしまう――という部活社会のリアルが描かれています。

そこで今回は部活動における人間関係の歪さを、現実世界の出来事と漫画で描かれたフィクションの両方の共通項をまとめてみました!

広陵高校で起きた“寮内暴力”事件

2025年1月末に野球部の寮内で、
2年生4人が1年生に対し、顔を平手打ちするといった暴力行為が起きました。
学校はこの件を日本高野連に報告し「厳重注意」を受け、そして加害者は1か月の対外試合禁止にした。

ただ現実には加害者生徒は部活動を続け甲子園出場を果たしたのに対し、

苛烈な上下関係と部内のルールによって、被害者は退部・転校し夢を絶たれました。

このようなシステムの犠牲になる若者たちがいる現実を、漫画忘却バッテリーでは17話で描いています。

忘却バッテリーとは

少年ジャンプ+にて連載中の漫画作品。ジャンルは野球+コメディ+人間ドラマ。

あらすじ

かつて中学野球界に名をとどろかせた天才バッテリー、清峰葉流火(きよみね はるか)要圭(かなめ けい)
圭は天才的な頭脳で投手をリードする名捕手だったが、中学生のあるとき記憶喪失となり、野球知識ゼロの素人になってしまう。

野球部のない高校に進学した圭だったが、圭についてきた怪物投手の清峰や、
かつて彼らに敗れ野球をやめていた元強豪選手たちが、偶然にも同じ高校に進学していた。


何らかの“過去”や“挫折”を抱えた高校生たちがそれぞれの理由と想いを胸に、再び野球に挑むことになる――。

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部活動の歪なシステムに異議を唱える

『忘却バッテリー』第17話にて、圭はリアルの野球が嫌いだと公言する生徒に出会います。

中学時代の彼は「球拾いは1年がするもの」「10m先にいる先輩に挨拶しないと説教」などのシステムに嫌気がさして野球部をやめていました。

ここでプロスポーツ選手への道は厳しい上下関係に堪えることを前提とし、そこからあぶれた者は切り捨てられる。

このシステムのせいで埋もれた才能があったのではないかと描写されます。

事実、彼はとても速く走れる素晴らしい足を持っていましたが、彼自身は気づいていませんでした。

現実とフィクションの共通構造

項目広陵高校事件
(現実)
『忘却バッテリー』
17話(フィクション)
共通する構造
舞台強豪高校の野球部高校の野球部運動部の序列社会
被害者の状況暴行を受けた生徒が退部・転校序列に従えない選手が所属からあぶれる上下関係順応が
優先される
加害行為先輩からの暴行・パワハラ先輩による圧力や序列強制上下関係を利用した
支配
結果被害者の孤立・
排除
順応できない者は埋もれる被害者側が不利益を受ける
指導者・組織の対応学校や監督が沈静化
を優先
大人による介入なし「部内解決」文化による隠蔽体質

上下関係のピラミッド

運動部では、序列は次のようなピラミッド構造を形成します。

  • 頂点:上級生
  • 中間層:序列に従うことで立場を守る者
  • 下層:下級生や立場の弱い者

この構造の中で、被害者は下層から押し出され埋没。

最悪広陵高校の事件のように退部・転校という形で部活の外へと追いやられます。

問題は、この排除が実力や正義感からではなく、序列への適応力で決まるという点です。

この問題がなくならない理由

  • 被害者が声を上げにくい同調圧力
  • 加害者よりも被害者が排除される逆転構図
  • 学校・監督による事態の隠蔽や軽視

これらは、上下関係を「礼儀や規律」ではなく「支配の道具」として使う文化が根付いたことによる結果です。

悪しき文化を変えるためにすべきこと

  • 外部相談窓口の常設及び匿名性の確保
  • 上下関係を「相互尊重」のシステムに再定義
  • 被害者保護を最優先にした制度の設計

まとめ

広陵高校の事件も『忘却バッテリー』の描写も、突きつけてくる問いは一緒です。

才能を活かす環境を作るのか、それとも古い序列文化を守るのか」。

この選択が、日本の運動部文化の未来を決めるでしょう。

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